01. SPY
[オリジナル歌唱:槇原敬之 作詞・作曲:槇原敬之]
『DISCOVER JAPAN』シリーズ以外のカヴァーを収めたDisc3のオープニングを飾るのは、槇原敬之が1995年にチャート1位を記録したヒット・ナンバー。2012年、鈴木雅之の「コラボレートシングル3部作」の第一弾として槇原敬之が作詞・作曲を手がけた「THE CODE 〜暗号〜」がリリースされ、そのカップリングに収められている。「THE CODE 〜暗号〜」は2011年時点で制作されていたが、東日本大震災の影響から翌年まで延期となったもの。『DISCOVER JAPAN』と制作時期が重なったため、スパイ映画さながらの編曲を服部隆之が担当し、『DISCOVER JAPAN』と関係性の深いナンバーとなった。「ソロのヒストリーの中で、いろいろなシンガー・ソングライターにお願いして、楽曲提供やプロデュースという形でコラボしてきたわけだけど、その時にそのアーティストのオリジナルをカヴァーするのがもうひとつのコラボレーション。そのことでコラボレーションすることの意味がより深くなると思うんだ」(鈴木雅之)
02. ルビーの指環
[オリジナル歌唱:寺尾 聰 作詞:松本 隆 作曲:寺尾 聰]
オリジナルは、言うまでもなく日本のポップス/歌謡史に燦然と輝く寺尾 聰の1981年の大ヒット。この鈴木雅之ヴァージョンは、2011年2月にリリースされたソロ25周年記念の35枚組シングルBOX『Martini Box』に新録音曲として収録された。1981年、このナンバーがテレビ番組『ザ・ベストテン』で12週連続1位を記録していたのは、シャネルズが「街角トワイライト」「ハリケーン」でやはりチャートを賑わせた時期と重なっている。「グループでデビューして1年目の鈴木雅之に、ソロ・ヴォーカリストとしての大人の輝きを見せてくれた、そんな憧れのナンバー」とマーチン。井上 鑑が編曲を担当し、クールでソウルフルな鈴木雅之流AORと呼びたい仕上がりとなっている。
03. 帰りたくなったよ
[オリジナル歌唱:いきものがかり 作詞・作曲:水野良樹]
2019年のシングル「ラブ・ドラマティック feat. 伊原六花」のカップリング曲。「ラブ・ドラマティック」の作詞・作曲を手がけた水野良樹 (いきものがかり・HIROBA)へのリスペクトを込めて、いきものがかりの2008年のナンバーをセレクト。「水野良樹とはレーベル・メイトでもあり、2020年へと向かう『新しい鈴木雅之』を象徴するという意味で、とても素晴らしい仕事をしてくれた。本当に感謝してます」と語るマーチン。ポップ・チューンからバラードまで幅広いサウンドを生み出す水野良樹の楽曲群の中からセレクトしたのがバラードというのも鈴木雅之らしさが滲む。このシングルのプロデュース・アレンジを担当したのは本間昭光。「いきものがかりも手がける彼ですが、自分としてはこの時が初のコラボ。その初の録音で『鈴木雅之の声が入ることで100%になる』というアレンジ術は、さすがの手腕でした」(鈴木雅之)
04. メロディー (Remix'22)
[オリジナル歌唱:玉置浩二 作詞・作曲:玉置浩二]
ソロ・デビュー30周年を迎え、還暦を迎える年となった2016年、それを記念する玉置浩二とのビッグ・コラボレーションとなったシングル「泣きたいよ」のカップリング。ここでもまた玉置浩二へのリスペクトを込めてシングルとして1996年にリリースされたバラードがセレクトされている。日本を代表するバラーディアーふたりのそれぞれの個性、曲の懐の深さを味わえるという意味でも音楽のギフトに溢れたカヴァーとなった。「このナンバーはひとフレーズごとに聴く人の胸にいろんなシーンが浮かんでくると思う。ラヴソングは4分間のドラマ、ってずっと言わせてもらってきたけれど、このナンバーもまさにそんな一曲」とマーチン。今回はこの曲を含めた4曲がRemix'22としてヴァージョンアップされ、さらにその奥行きを深めている。
05. 道化師のソネット
[オリジナル歌唱:さだまさし 作詞・作曲:さだまさし]
オリジナルは1980年、さだまさしの代表曲のひとつとなったシングル。奇しくもリリース日がシャネルズのデビュー曲「ランナウェイ」と同じ2月25日。同日にリリースされたナンバーという「縁」もつないだセレクトもマーチンらしさ。鈴木雅之ヴァージョンは、2012年の「コラボレートシングル3部作」の完結編となった、さだまさし作詞・作曲のシングル「十三夜」のカップリングに収録。東日本大震災への思いが詰まった「十三夜」とも呼応する歌詞にも大きな意味が込められている。「さださんが、グレープ時代に歌った『精霊流し』を聴いた時に、あの究極の歌詞は凄いって、当時から思っていたんだ」と、ソロのヴォーカリストとして歌詞にこだわり続けてきたマーチンは振り返る。「『十三夜』も『道化師のソネット』も歌詞とメロディーが素晴らしいからこそ、鈴木雅之ヴァージョンは、AORやシカゴ・ソウルを感じさせるようなスタイルで歌わせてもらいました」(鈴木雅之)
06. ジョニィへの伝言 (Remix'22)
[オリジナル歌唱:ペドロ&カプリシャス 作詞:阿久 悠 作曲:都倉俊一]
2007年に他界した稀代の作詞家・阿久 悠のトリビュート・アルバムとして2008年にリリースされた『歌鬼(GA−KI)〜阿久 悠トリビュート〜』に収録。オリジナルは1973年のペドロ&カプリシャスの大ヒット。ペドロ&カプリシャスは、このナンバーからリード・ヴォーカルが髙橋真梨子(当時は高橋まり)に変わり、「ジョニィへの伝言」「五番街のマリーへ」という名曲・名唱を残している。女性ヴォーカル曲、また女性が主人公の歌を男性ヴォーカリストである鈴木雅之が歌う、その魅力は「夢で逢えたら」でも証明済み。「最初は『夢で逢えたら』も、女性ヴォーカル曲のカヴァーはどうなんだろうという意見もあった。でも、これは鈴木雅之に限ったことではないけれど、そこで起こるマジックこそが音楽、ラヴソングの凄さだと思うんだ」(鈴木雅之)
07. さよならの向う側 (Remix'22)
[オリジナル歌唱:山口百恵 作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童]
2005年にリリースされた『山口百恵トリビュート Thank You For…part2』に収録。オリジナルは山口百恵が引退を発表した1980年。ファンへのメッセージが込められた事実上のラスト・ソングであり、引退コンサートでは、マイクを置いて立ち去るラスト・シーンの直前に歌われた、まさに歌謡史に残るナンバー。1980年、デビュー直後のシャネルズは、いわば山口百恵伝説をギリギリで目撃することができたことになる。そして山口百恵のヒットを生み出してきた宇崎竜童もマーチンにとって大きな存在。ダウン・タウン・ブギウギ・バンド時代から影響を受けてきたことはもちろん、大滝詠一が「スモーキン・ブギ」をパロディー化した「禁煙音頭」では、「竜ヶ崎竜童」の名でヴォーカルを担当。その後、1995年にはシングル「アダムな夜」(作詞:阿木燿子 作曲:宇崎竜童)でコラボレーションも果たしている。
08. 小さな恋のうた feat. キヨサク(MONGOL800) (Remix'22)
[オリジナル歌唱:MONGOL800 作詞:上江洌清作 作曲:MONGOL800]
2012年の「コラボレートシングル3部作」としてリリースされた「Endless love, Eternal love」のカップリング・ナンバー。オリジナルは2001年にリリースされ、アルバム収録曲でありながらチャートで14週連続トップ圏内に入る大ヒットを記録したMONGOL800の代表曲。「3部作」としては、槇原敬之、さだまさしと同じく作詞・作曲を手がけたキヨサクをリスペクトしての収録だが、このヴァージョンはキヨサク本人とのデュエット・スタイル。佐橋佳幸のアレンジで軽快なジャンプ風なアレンジで仕上げられている。ちなみにふたりの出会いは、小田和正のクリスマス特番『クリスマスの約束』。「キヨサクと一本のマイクで歌うことになったんだけど、歌い始めた瞬間に耳元で聴こえてきた声にドキっとさせられたんだよね。ニュアンスが、なんてオレの若いときに似てるなって」と振り返るマーチン。この出会いで歌ったのが「小さな恋のうた」だったことから、このシングルのコラボレーションに発展した。
09. 地球はメリーゴーランド
[オリジナル歌唱:ガロ 作詞:山上路夫 作曲:日高富明]
70年代を代表するフォーク/ロック・グループ、ガロの1971年のナンバー(シングルとしては1972年リリース)。大ヒットとなった「学生街の喫茶店」以前の曲であり、いわば隠れた名曲のひとつ。当時、中学生でフォーク/ロックにも影響を受けていたマーチンならではの「再発見」の一曲として、1999年のシングル「SO LONG」のカップリングに収録された。マーチンは、『DISCOVER JAPAN』シリーズのアイデアの原石として、「アイズレー・ブラザーズのロナルド・アイズレーがバート・バカラックとコラボしてバカラック・ナンバーを歌ったアルバムにヒントがあった」と語る(2004年『ヒア・アイ・アム:アイズレー・ミーツ・バカラック』)。CSN&Yにも影響を受けてきたガロのナンバーの再発見は、結成初期からジャンルを越えてシンガー・ソングライターのナンバーをカヴァーし続けてきたアイズレー・ブラザーズとのシンパシーも感じさせてくれる。
10. SPIRIT OF LOVE feat. 佐藤竹善
[オリジナル歌唱:SING LIKE TALKING 作詞:CAT GRAY・藤田千章 作曲:佐藤竹善]
2010年、鈴木雅之デビュー30周年のアニヴァーサリー・シングルとしてリリースされた「キミの街にゆくよ」のカップリング・ナンバー。「キミの街にゆくよ」は、佐藤竹善が作詞・作曲を手がけ、佐藤の故郷である青森で東北新幹線全線開業キャンペーンソングに起用された。この「SPIRIT OF LOVE」は、1995年のSING LIKE TALKINGのシングル曲。「小田和正さんとの縁もあり、佐藤竹善とコラボレーションしてきた思い出もたくさんあるし、何より上質さを常に追求し続ける竹善の音楽に対する姿勢にいつも刺激を受けている。まさに大切な音楽仲間のひとり」とマーチンが称賛する佐藤竹善へのリスペクトと、当時30年間歌い続けた矜持を込めて、ソウルフルなデュエットとして仕上げられた。
11. 見上げてごらん夜の星を
[オリジナル歌唱:坂本 九 作詞:永 六輔 作曲:いずみたく]
「上を向いて歩こう」と共に坂本 九の代表曲として長く愛され続ける1963年のヒットをアルバム『Tokyo Junction』でカヴァー。この2001年のアルバムは鈴木雅之の出身地である「東京・大森」をテーマに制作されていて、同じ京浜エリアで生まれ育った坂本 九へのリスペクトと追悼も込められている。実はこの「見上げてごらん夜の星を」は、元々は同名ミュージカルの主題歌であり、坂本 九にとってもカヴァー・ナンバー。マーチンが幼い頃から洋楽のヒットソングもカヴァーしていた坂本九のヴォーカリストとして存在感は、この『DISCOVER JAPAN DX』に「涙くんさよなら」「見上げてごらん夜の星を」の2曲が収録されている事からも滲み出ている。
12.Tシャツに口紅 with 大滝詠一 (Solo Ver.)
[オリジナル歌唱:ラッツ&スター 作詞:松本 隆 作曲:大瀧詠一]
1983年、シャネルズから改名して新たなスタート地点にたったラッツ&スターにとって大きな記念碑であり、その後のソロ・ヴォーカリスト=鈴木雅之にとっても財産となったナンバーを、満を持してソロ・ヴァージョンとしてリテイク。しかも、今回は大滝詠一のオリジナル・コーラスを「再発見」して収録するという、大滝詠一ファンにとっても貴重な1曲となった。マーチンは「大滝さんがJACK TONESという名義でひとり多重コーラスをしていたのは有名だと思うけど、実は『Tシャツに口紅』もデモ・テープの時点でメンバー全員分のコーラスを大滝さんが歌ってくれていたんだ。しかも、ひとりひとりが練習しやすいようにトラックを分けてカセットに入れてくれたんだよね」と当時の大滝伝説を語る。そして、今回の新たなヴァージョンに当たっては、「その1983年のオリジナルのレコーディングのときの大滝さんのヴォーカル・ディレクションを思い出しながら歌ったんだ」とマーチン。「大滝さんのコーラス、そして井上 鑑さんのアレンジを含めて、大滝さんが築き上げたNIAGARA FALL OF SOUNDをあらためてDISCOVERできたと思っています」(鈴木雅之)
Text by 渡辺祐