01. 怪物
[オリジナル歌唱:YOASOBI 作詞・作曲:Ayase]
2020年代を疾走するトップ・ランナー、YOASOBIの、まさにモンスター級のヒット・ナンバーを鈴木雅之流の解釈で歌った新録音。「Ayaseが描き出す世界観は、2020年代のラヴソングという意味で群を抜いていると思う」とYOASOBIを絶賛するマーチン。「歌詞の世界も2020年代的でありながら普遍的。大きな災害やコロナ禍を体験してきたいまだからこそ歌いたい、聴いてもらいたい曲」とセレクトの理由を語る。そして「曲のテンポを落としたり、ファンク的な展開を仕込んだりすることで鈴木雅之流に仕上げることができたと思う」と語る通り、印象的なオーケストラ・アレンジのイントロから全編にわたってオリジナルとはまた違うドラマティックな景色が展開することとなった。
02. エイリアンズ
[オリジナル歌唱:KIRINJI 作詞・作曲:堀込泰行]
2017年リリースの『DISCOVER JAPAN III』に収録され、セレクトの「意外性」もあって大きな評価を得た一曲。「KIRINJIには、どこかではっぴいえんどの香りを感じていた」という鈴木雅之。名曲として名高いこのナンバーにAOR/ブラック・コンテンポラリーのテイストを吹き込んだ服部隆之アレンジは、シリーズとしては珍しくデジタル+生楽器で構築されている。元曲に近いイントロのフレーズや構成からは「元曲へのリスペクト」という思いも感じられ、まさに『DISCOVER JAPAN』シリーズを代表する一曲となった。
03. 接吻
[オリジナル歌唱:オリジナル・ラブ 作詞・作曲:田島貴男]
オリジナル・ラブが1993年にリリース、その後、無数のカヴァーが生まれ、J-POPのスタンダード・ナンバーとなった名曲。「鈴木雅之が歌うことで、さらにこの曲の凄さがわかるはず」という思いから2014年の『DISCOVER JAPAN II』に収録。田島貴男とマーチンは、アルバム『She…』やエナメル・ブラザーズでもコラボレーショを重ね、さらに「接吻」リリース時にオリジナル・ラブに在籍していたベーシスト・小松秀行、ドラマー・宮田繁男とはそれぞれライヴ/レコーディングを共にしてきたという縁の深い関係。ヴォーカリストとして音楽仲間を大切にしてきた、そんな「鈴木雅之流」も込められている。
04. 明日への手紙
[オリジナル歌唱:手嶌 葵 作詞・作曲:池田綾子]
今回の新録音のひとつとしてセレクトされた手嶌 葵のナンバー。オリジナルは手嶌 葵の2014年のアルバム『Ren'dez-vous』に収録、2016年にドラマ主題歌としてリアレンジされてシングル・リリースされている。「ソロのヴォーカリストとしてバラードを丁寧に届けたい、そう思ってスタートした」と35年前を振り返るマーチン。そして「そのソロとしての原点を思ったときに、いま届けたいバラードとしてこの曲が浮かんで来た。バラードで誰かを応援できることが表せたと思う」と語るように、ソロ35周年のひとつの到達点を示すかのような仕上がりとなっている。「コロナ禍の中で、みんなの思いも変化しているし、これからも変わっていくと思う。この曲に込められているのは、単に『頑張れ、頑張ろう』というメッセージではなくて、いまの自分から未来の自分に向けての希望というメッセージだと思う。いろいろなことがあっても前に進んでいこうというメッセージを丁寧に届けられたんじゃないかな」(鈴木雅之)
05. 愛し君へ
[オリジナル歌唱:森山直太朗 作詞:御徒町凧 作曲:森山直太朗]
森山直太朗の2004年のアルバム『新たなる香辛料を求めて』からセレクトされ、2011年の『DISCOVER JAPAN』第一作に収録。東日本大震災への思いからスタートした1作目として「当時、まさに、いま歌いたい、いま伝えたいメッセージだった」とマーチン。それを象徴するように当時シングルカットもされている。そのリリース当時に「この歌詞とメロディー、それを鈴木雅之が歌うこと、それが一体となって、幅広い層に届くことを信じています」と語ったマーチンだが、服部隆之による流麗なアレンジも相まって、あらためてコロナ禍にある2022年にも通じる大きなメッセージとなった。
06. 幸せな結末 with 松 たか子
[オリジナル歌唱:大滝詠一 作詞:多 幸福 作曲:大瀧詠一]
2013年12月、大滝詠一の訃報に接し「大滝さんの曲を歌いつなぎたい」という思いから、2014年の『DISCOVER JAPAN II』に収録。オリジナルは、1985年に当時12年ぶりの新曲として話題となった大滝詠一のシングル曲。ここでデュエットが実現した松 たか子が主演したドラマの主題歌として制作され、タイトルやジャケット・デザインなど、大滝さんらしい遊び心にあふれた作品だった。「当時のテレビ番組でこの曲を松さんが歌ったことがあって、大滝さんがそのヴォーカルを気に入っていたっていう逸話もあるし、松さんがライヴで『夢で逢えたら』をカヴァーしたのを知ってコンサートを見ていたっていう話もあるんだよね」と振り返るマーチン。ソロとしての35年、そしてグループでのデビューからの40年の年月の中で起こった様々な出会いへの「恩返し」のような一曲となっている。
07. You Go Your Way with 川畑 要 (CHEMISTRY)
[オリジナル歌唱:CHEMISTRY 作詞:小山内 舞 作曲:豊島吉宏]
「デュエットも鈴木雅之のひとつのテーマ」という言葉通り、「幸せな結末」から続くデュエット・ナンバー。オリジナルは2001年リリース。チャート1位を獲得し、CHEMISTRYが『NHK紅白歌合戦』に初出場した際にも歌われたナンバーで、プロデュースと作詞は、鈴木雅之のオリジナル・アルバムのプロデュースも手がけた松尾 潔 (ペンネーム・小山内 舞)が手がけている。「KC (松尾 潔)が書いた歌詞のテーマを再発見できた、そんな思いもあって、最新で最高のコラボレーションになったと思う」とリリース当時に語ったマーチン。「丁寧にバラードを歌う」という共通点で結ばれ、レコ−ディングやライヴでコラボレーションを重ねてきた川畑 要とは23歳差。「年齢に関係なく、音楽仲間といつでもひとつの曲で出会えることも伝えたかった」(鈴木雅之)
08. ENDLESS STORY
[オリジナル歌唱:伊藤由奈 作詞・作曲:Thomas Dawn Ann 日本語詞:ats-]
原曲は1993年の映画『幸福の条件』のサウンドトラックに収録されていたドーン・トーマス(Thomas Dawn Ann)の「If I'm Not in Love With You」。2005年に伊藤由奈がカヴァーし、映画『NANA-ナナ』の劇中歌としても使用されてヒットを記録した。鈴木雅之ヴァージョンは、2017年リリースの『DISCOVER JAPAN III』に収録。「映画に使われていたこともあって、完成度がもの凄く高い曲。それだけにアレンジ、歌い方へのチャレンジができた」とマーチンが語るように元曲の完成度にリスペクトしつつ、鈴木雅之が描くイメージでラストまで歌いきる、まさに鈴木雅之流のカヴァーならではの豊かさが聴こえてくる圧巻のバラード。
09. タイムトラベル
[オリジナル歌唱:原田真二 作詞:松本 隆 作曲:原田真二]
1978年に原田真二の4枚目のシングル (「ジョイ」と両A面)としてリリースされ、オリコン4位を記録、1978年の『NHK紅白歌合戦』でも歌われたナンバー。2014年『DISCOVER JAPAN II』制作時にマーチンが「1950年代から2010年代までの約60年間、鈴木雅之が影響を受けてきた音楽の世界を旅して欲しい」と語った思いを象徴するかのような歌詞は松本 隆の手による。「作詞が松本 隆さんだということももちろんあるし、シャネルズのデビュー前から聴いていた原田真二さんには、ポップなんだけど、R&Bやファンクのエッセンスも香らせている、そんなシンパシーを感じていたんだ」。そんなファンクネスとオーケストレーションとの融合が大きな聴きどころとなっている。
10. 歌うたいのバラッド
[オリジナル歌唱:斉藤和義 作詞・作曲:斉藤和義]
斉藤和義が1997年に15枚目のシングルとして発表。日本のロック史に燦然と輝く名バラードとして数々のカヴァーが生まれてきた。一流の「曲の料理人」である鈴木雅之にとっては、まさに「最上級の素材」と呼べる一曲であり、7分を越える熱唱となった。「シンガーであれば、誰もがこの曲に込められた思いを持っているはずだと思うんだけれど、こと鈴木雅之にとっては、すでにかけがえのない歌になったね」とマーチンも語るように、2014年『DISCOVER JAPAN II』収録後はライヴでも重要なポジションで披露されてきた。「バラードを丁寧に歌えるヴォーカリストになりたい」という35年前からの思いをつなぐこの曲も『DISCOVER JAPAN』シリーズを象徴する一曲と呼んでいいだろう。
Text by 渡辺祐