01. 君は薔薇より美しい
[オリジナル歌唱:布施 明 作詞:門谷憲二 作曲:ミッキー吉野]
Disc1のセレクションを「平成・令和編」とすればDisc2はいわば「昭和編」。そのオープニングは1979年にCMソングに起用されてヒットした布施 明の明朗なポップソング。『DISCOVER JAPAN III』でもイントロダクションに続く1曲目として収録された。ゴダイゴのリーダーでもあるミッキー吉野の生み出したメロディーを70年代ポップスの持つ伸びやかさを活かしたヴォーカルとアレンジでカヴァーし、「元曲を礼儀正しくリスペクトする」という思いと「鈴木雅之流」を絶妙なバランスで融合。コーラスとの掛け合いを楽しむような後半の展開は、ライヴでの鈴木雅之の表情も伝わってくる。
02. 熱き心に
[オリジナル歌唱:小林 旭 作詞:阿久 悠 作曲:大瀧詠一]
1985年にリリースされた、昭和のポップス/歌謡史の中でも金字塔的な一曲。「Disc2に収められた曲は、どれも日本人にとって大きな存在の歌であることは言うまでもないけれど、そのどれもが広い意味で素晴らしいラヴソング」と語る鈴木雅之。特にこのナンバーをシリーズの第一弾『DISCOVER JAPAN』で歌ったことは、その後の10年をスタートさせる大きな一歩となった。「大瀧詠一&阿久 悠という、この二人の凄さをあらためて感じると同時に、鈴木雅之流ラヴソングを築いてきた、ソロ・ヴォーカリストとしての年月にも相応しいものにできたんじゃないかと思ってます」(鈴木雅之)
03. 愛燦燦
[オリジナル歌唱:美空ひばり 作詞・作曲:小椋 佳]
押しも押されもしない昭和の大スター・美空ひばりが1985年にリリースし、1989年に帰らぬ人となった後も歌い継がれる後期の代表曲。「2011年に『DISCOVER JAPAN』を制作するにあたって、広い意味でのラヴソング、愛というテーマを考えた時に、真っ先に思い浮かんだ曲。誰もが知っている曲だからこそ鈴木雅之流にどう歌いこなせるかという、ヴォーカリストとしての自分を再発見することもテーマだった」とマーチン。美空ひばりファンから鈴木雅之ファンまで、世代を越えて親しまれる納得のカヴァーが誕生している。
04. 木蘭の涙
[オリジナル歌唱:スターダスト☆レビュー 作詞:山田ひろし 作曲:柿沼清史]
スターダスト☆レビューの「木蘭の涙」を新録音で収録。スターダスト☆レビューは1981年にデビューし、デビュー直後からTV番組などでも共演してきた旧知の仲。鈴木雅之の前作『ALL TIME ROCK ‘N’ ROLL』でも「ランナウェイ」のニュー・ヴァージョンに参加している。スターダスト☆レビューのオリジナル録音は1993年。近年のライヴではスターダスト☆レビュー自身がテンポを落としたバラードとして育んできたナンバーであり、今回の新カヴァーにもそのマナーを反映。「ずっと時代を併走してきた特別な存在」の名バラードへのリスペクトがこめられている。
05. ラヴ・イズ・オーヴァー
[オリジナル歌唱:欧陽菲菲 作詞・作曲:伊藤 薫]
「熱き心に」「愛燦燦」などと並んで、国民的な人気曲として愛され続ける欧陽菲菲の80年代のヒット・ソング。いわゆるカラオケ定番曲として、いまだ人気の衰えを知らないのは言うまでもない。「誰もが知っている、誰もが口ずさめる歌だからこそ、鈴木雅之ヴァージョンを楽しんでもらいたかった」と語るマーチン。「別れに対する気持ち、その切なさと強さという歌詞に込められたメッセージが、これって“和のブルース”と解釈できるんじゃないか」という再発見からロック・バラード/ゴスペル的なアプローチで『DISCOVER JAPAN』を彩ることとなった。
06. 青春の影
[オリジナル歌唱:チューリップ 作詞・作曲:財津和夫]
1974年にリリースされたチューリップのシングル。「(若い頃に)チューリップもよく聴いていて、本当に名曲だと思った」という鈴木雅之。カヴァーするナンバーを「鈴木雅之の色で染め上げたい」と常に語ってきたマーチンらしく「豊かさを湛えた大人」としての「青春の影」が聴こえてくる。70年代には日本のフォーク/ロックにも影響を受けたマーチン。これまでもオフコース (小田和正)やガロ、桑名正博などの名曲をカヴァーし、このナンバーも収録された『DISCOVER JAPAN III』では、財津和夫、吉田拓郎、井上陽水が手がけたナンバーを歌いつないでいる。まさに「70年代の青春」を生きた世代ならではの「再発見」が溢れている。
07. 紅い花
[オリジナル歌唱:ちあきなおみ 作詞:松原史明 作曲:杉本真人]
ちあきなおみが1991年にリリース、その後、無期限の芸能活動休止に入ったちあきなおみにとって最後のオリジナル・シングルとなった、音楽ファンにとって思い出深いナンバー。「ドラマチック歌謡と呼ばれていたちあきさんの世界は、鈴木雅之の世界にも通じるところがある気がする」と語るマーチン。スタンダードジャズ、シャンソン、民謡、歌謡曲、ポップスなど、ジャンルを超えた「歌」を紡ぎ続けてきたちあきなおみの曲を、鈴木雅之がさらに歌いつなぎ、ちあきなおみの「黄昏のビギン」などを編曲してきた服部隆之がアレンジする……まさに『DISCOVER JAPAN』の思いが込められた一曲。
08. スローバラード
[オリジナル歌唱:RCサクセション 作詞・作曲:忌野清志郎・みかん.]
中学時代からRCサクセションを聴いてカヴァーし、そして1979年リリースの「スローバラード」を聴いたとき「当時、日本のどのバラードよりもソウルを感じた」というマーチン。その忌野清志郎による日本ロック史に残る名バラードへのリスペクトを込めて、イントロのフレージングから全体のアレンジに至るまでRCの元曲を活かした構成となっている。エンディングに入るフェイクのフレーズは、実はこの曲に刺激されて書いたというシャネルズの「MAMMA」(1981年のアルバム『Hey!ブラザー』収録)を引用。「あの時の想いから約40年後の鈴木雅之流ソウルを聴いて欲しい」(鈴木雅之)
09. 月のあかり
[オリジナル歌唱:桑名正博 作詞:下田逸郎 作曲:桑名正博]
桑名正博が1978年のアルバム『テキーラ・ムーン』に残した名曲。特に出身地である関西での人気は抜群で、ある年齢以上の大阪人男性は、ほとんどの人が歌うことができるというカラオケのスタンダード。「シャネルズのデビュー当時、桑名さんがプロデュースしていた大晦日の『ニュー・イヤー・ロック・フェスティバル in 関西』に出演させてもらったり、桑名さんが『リンダ』をカヴァーするときにバックでシャネルズがコーラスをしたり、縁の深い存在だった」と振り返るマーチン。『DISCOVER JAPAN II』では、東のブルースマンとして柳ジョージのナンバーをセレクトし、西のブルースマンとしてこのナンバーをセレクト。「ジョージさんも桑名さんも帰らぬ人となってしまった今、ヴォーカリストとして歌いつないでいきたい、そう思える曲を歌わせてもらいました」(鈴木雅之)
10. 涙くんさよなら with 松下奈緒
[オリジナル歌唱:坂本 九 作詞・作曲:浜口庫之助]
浜口庫之助が作詞・作曲を手がけ、数々の競作、カヴァーが誕生した昭和の大ヒット曲。1965年に坂本 九のシングル曲として発売され、同年9月にジョニー・ティロットソンが英語と日本語でカヴァーしてヒットを記録している。マーチンは、ジョニー・ティロットソン・ヴァージョンへのオマージュを込めてカントリースタイルをセレクト。「ノスタルジックな時代に連れていってくれるような、清廉で無垢な歌声の持ち主」と鈴木雅之が語る松下奈緒を迎えて、男女によるポップでドリーミーなデュエット・ヴァージョンとして『DISCOVER JAPAN III』に収録された。ちなみに『DISCOVER JAPAN III』がリリースされた2017年のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』では、最終回の重要なパートで歌われている。
Text by 渡辺祐